『え〜え〜その引き出しのことですよ』ロックグラスを磨きながら歯科医は話しだした。
治療器具と並んでショットグラスなど並べるものだから客がこないのも無理がない、おもむろに釣りの引き出しの話ははじまった。
『釣れない時に引き出しが多いとええのよ』けっしてオカマはないがオネイ言葉は癖であろう。
『引き出しって経験の積み重ねですよね、例えばどんな引き出しがあります?』
『例えば撒き餌に麻酔薬を混ぜる・・・・・』『混ぜんでしょう』
『定説が引き出しで無い場合も多いですよね、例えば釣れないとハリスを細くする』
『そうね〜太くて釣れないならマグロの一本釣りは全く釣れないことになるものね〜』
『でも現実細くしたら喰って来たなんてことはありますよね』
『細くしたことで仕掛けの流れが変化したからじゃないかしら』
『なるほどね〜それも一理ですね』
『都市伝説的な引き出しもあるわね、これけっこう効き目あったりする』
『例えば?』
『持ち竿をやめて自由に流してみる、そうしたときに喰って来たり、ず〜っと見つめていた浮き
眼を離したほんの少しの間に沈んでいた、これらはいわゆる殺気の問題よね、入れ込んでいる人の側には寄らない方がいいかも』
『殺気ね〜小生の場合恐ろしい程でてますが』
『ちょいと麻酔してみる?』
『いりまへんわ』